薬剤師はどのような場所で働いているのでしょうか。
ちょうど厚生労働省の2018年の調査に薬剤師の数や働き先をまとめたものがあったのでご紹介します。
この薬剤師調査は2年ごとに行われている調査であり、医師なども同様に調査されています。
薬剤師調査(2018年)
薬剤師数、男女比
薬剤師数は約31万人で、男性約12万人(39%)、女性約19万人(61%)です。
2年前と比べて薬剤師数は約1万人増えているようです。
私は薬学部が6年制になってからの人間なのですが、そのあたりで大学の薬学部が新設されたりして薬剤師数増加の一因になっているかと思います。
施設・業務の種別にみた薬剤師数とその割合
薬剤師数(人) | 構成割合(%) | |
薬局の勤務者 | 163717 | 52.6 |
薬局の開設者・法人代表者 | 16698 | 5.4 |
医療施設で調剤・病棟業務に従事する者 | 57304 | 18.4 |
医療施設で治験、検査等の業務に従事する者 | 1554 | 0.5 |
診療所で調剤・病棟業務に従事する者 | 4708 | 1.5 |
診療所で治験・検査等の業務に従事する者 | 1098 | 0.4 |
介護老人保健施設の勤務者 | 832 | 0.3 |
介護医療院の勤務者 | 16 | 0.0 |
大学の勤務者(研究・教育) | 4754 | 1.5 |
大学院生又は研究生 | 509 | 0.2 |
医薬品販売・製造に従事する者 | 29009 | 9.3 |
医薬品卸・店舗販売業・配置販売業に従事する者 | 12294 | 3.9 |
衛生行政機関又は保健衛生施設の従事者 | 6661 | 2.1 |
その他の業務の従事者 | 6517 | 2.1 |
無職 | 10339 | 3.3 |
というわけで薬局の従事者が圧倒的に多いですね。私の学生の時の就職活動の中では臨床を学びたければ病院へという風潮があり、病院への就職を目指す人も多かったのですが病院ごとに薬剤師の定数が決まっていたり、夜勤などの体制上続けるのが困難であったりと実際には薬局で働くことになる人が多いのでしょうか。
また、施設ごとの薬剤師数の推移をみると、薬局の薬剤師数の伸びが大きく、医療施設は若干ですが増加傾向が続いています。
人口10万人当たりの薬剤師数
薬局・医療施設に従事する人口10万対薬剤師数は190.1人で、前回に比べ8.8人増加しています。
都道府県別にみると徳島県が233.8人と最も多く、次いで東京都223.3人、兵庫県223.2人となっています。最も少ないのは沖縄県で139.4人で、次いで福島県152.2人、青森県153.0人となっています。沖縄県には薬学部がないので薬剤師数が少ないのはしょうがないといった感じでしょうか。
増えてくる薬剤師
最近もまだ薬学部の新設があるようです。薬学部は基本的には6年制の学部になるため一度入学してもらえれば6年間学費がもらえるということで大学の経営としてもおいしいようです。(留年や卒業延期も決して少なくない数います。私もです。)
こうして薬剤師が増えてくるわけですが1年目の薬剤師も30年目の薬剤師も服薬指導することによってもらえる報酬は同じです。ではどのようにして他の薬剤師と差別化を図っていけばよいのでしょうか。図らなくてもよいかもしれないですが。
薬剤師とコミュニケーション能力
薬剤師としての資格を取ったうえで、その上に様々な認定・専門資格があります。私自身もNST専門療法士というものを取得していますが、そんな認定・専門よりも大事なスキルがあると思います。
私は薬剤師として重宝されるのは医療の知識よりも、コミュニケーション能力だと思っています。時間がかかっても、分からないことがあればその場で調べればよいです。
コミュニケーション能力があることによって、以下のようなケースが考えられます。
〇患者さんに対して:この薬剤師の言うことなら聞こう。この人なら話しやすい。他でもらった薬もこの薬剤師さんにみてもらおう。
〇他の医療機関(主に門前病院、クリニック)に対して:この薬剤師の提案なら聞こう。もっと連携して医療に取り組もう。
〇社内の従業員に対して:この薬剤師となら一緒に働きやすい。困ったときに相談しやすい。
医療は、会社は、継続しないといけません。どんなに知識があってもコミュニケーションに興味がない人の周りではいざこざが起きます。知識があっても高圧的な人の言うことは誰も聞きませんし、その周りから去っていきます。
特に薬剤師業界は(今の所)転職がしやすいのもあり、また薬局は10人以下の店舗が多い狭い世界ですので、私が見てきた中で退職する原因の一番は人間関係です。コミュニケーションを軽んじると質のいい医療の提供に支障がでますし、また経営上もふさわしい人材とはなりえません。
たった1人だけ、店舗にやばい薬剤師がいて、そのせいで次々と周りの薬剤師や事務さんがやめていくという災難も身近にありました。

まとめ:薬剤師の今後と求められる薬剤師
大学の薬学部新設もあり、薬剤師は今後も増えてきます。人口は減っていくため薬剤師が少ない地域にも徐々に薬剤師は充足されてくるかと思います。
そんな中薬剤師として秀でるために、ついつい薬学についての勉強をしがちです。
ただ、それをちゃんと相手に伝えるためにも、自分が活躍できる場所にいるためにもまずはコミュニケーション能力が重要だと考えます。
コミュニケーション能力は特別に秀でるまでいかないと「社会人としての基礎」という程度でしょう。しかし「相手を一人の人間として尊重する」という姿勢が出来ていれば、どんな場所でも求められる薬剤師になれると思います。