病院でNSTのメンバーとして活躍している方、栄養に興味のある方の目標として「NST専門療法士」が掲げられることが多いかと思います。
私自身、このNST専門療法士を受験するまでに経験したことが、とても勉強になりおもしろかったので、これからNST専門療法士を目指す方にどうすればなれるのか、実地修練はどのようなことを行うのか、どのような試験なのかを分かりやすくお伝えしたいと思います。
NST専門療法士(栄養サポートチーム専門療法士)とは?
NST専門療法士とは、NST(栄養サポートチーム)の一員としてよりよい医療を提供するために日本臨床栄養代謝学会が認定している資格です。
この資格自体が何かの算定要件になるわけではないですが、栄養を学ぶ人の目標になることも多いのかなと思います。
※試験を受ける要件の一つの「実地修練」は栄養サポートチーム加算の算定要件になります。
受験資格は?
- 管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師の資格を持っていること
- 上記の資格で5年以上栄養サポート業務に関わっていること
- 学会の認めた学術集会などで30単位以上取得していること
- 40時間の実地修練を修了すること(症例報告あり)
上記4つを満たしたうえで試験に合格することでNST専門療法士として認定されます。
ちなみに試験は毎年11月頃のようです。
詳細は日本臨床栄養代謝学会ホームページの「栄養サポート専門療法士認定規定」もご参照ください。
各項目について少し補足していきます。
5年以上栄養サポート業務に関わっている
当時、私は薬剤師として病院でNSTの一員として働いていました。
しかし、その期間は2~3年ほどです。
病院での勤務期間は5年に満たないのですが、それ以前には調剤薬局で数年勤務していました。
「病院の期間」+「調剤薬局の期間」の5年間の栄養サポート経験(通常業務や在宅業務など)で受験資格はOKでした。最近は調剤薬局のみ経験しておられる薬剤師の受験申し込みというケースもあるようです。

学会で認めた学術集会などで30単位以上取得すること
まず受験必須セミナーで10単位、学術集会参加で10単位もらえます。この2つはNST専門療法士の受験資格に必須のため、「残りの10単位をどう集めるのか?」ということが問題になります。
おすすめは、受験必須セミナーもしくは学術集会に合計2回参加することです。どちらも参加するごとに10単位もらえます。また、2回目の参加分もちゃんと単位として認められます。私は受験必須セミナー1回と学術集会参加2回で30単位を申請し受理されました。
年に一度の学術集会の際にはこの受験必須セミナーも同じ会場であわせて開催されるため一気に20単位取得のチャンスです。
その代わり2日間ある学術集会と1日かぶるため、学術集会は1日しか参加できませんのでご注意ください。

受験必須セミナーはそれ自体が勉強になりますし、年に数回行われるため急いで取得したい場合は一番確実かなと思います。ただし申し込みは先着順になるので、参加する場合はすぐに申し込みましょう。
他にも学会で認めたセミナー、勉強会などで2単位くらいもらえるものもありますが、これは開催がそんなに多くないということと、たくさん参加しなければいけないということもあり受験用の単位集めとしてはあまりおすすめできません。
40時間の実地修練の修了
一番大変でした。実地修練を受け入れている病院を探すのが。
NST稼働施設の中で、さらに実地修練を受け入れてくれる心優しい病院さんを探さないといけません。ネット上で探すのですが、昔受け入れていたが現在は受け入れていないという病院も多く、また受け入れている病院もほとんどが年に1回程度のためタイミングが合わないと参加できません。実地修練を受けたくても受けられないという方も多くいるのだろうなと感じました。
ちなみに、実地修練は受けることで栄養サポートチーム加算の算定要件である「所定の研修を修了」を満たすことができます。ですのでNST専門療法士を取れなくても病院としては栄養サポートチーム加算の算定が可能になります。

実地修練施設の探し方
日本臨床栄養代謝学会ホームページの「栄養サポートチーム専門療法士認定教育施設一覧」から近くの施設を探します。
あとは「○○病院 NST」などで検索して受け入れをしているのか病院ホームページから確認します。実地修練を受け入れている施設であれば、次回の予定などを確認することが出来ます。
私の近くの認定教育施設ではホームページ上で実地修練を受け入れていることが分かったのですが、次回予定などがわからなかったので、直接メールして聞きました。そして予定を教えて頂き、その施設で実地修練を受けさせて頂くことができました。
ホームページ上の受け入れ内容が古い場合は現在はもう受け入れていない可能性が高いため連絡をとっても難しいと思います。

実地修練の内容
あくまで私がいった施設での内容です。
主に午前中は座学、午後はNSTラウンドという流れでした。
座学では医師、看護師、歯科医師、薬剤師などがそれぞれ1時間程度講義をしていただきとても面白かったです。私の病院では他職種の方からの研修がほぼなかったので、栄養学以前に医師や看護師からの講義というものが面白かったです。
NSTラウンドではミーティングから始まり、実際にベッドサイドで患者さんと話しているところまで見ることが出来ました。恐らくこの実地修練に参加する方は自施設でもNSTを担当していると思うので自施設と比べてどうなのかなど色んなことで頭をグルグルと回転させながらのラウンドになります。また、症例報告もあるため担当患者が決まると実際に改善点の提案など介入していきます。

実地修練の費用
研修施設によって異なるのですが、数千円~2,3万円くらいです。
研修施設としては「医師も含めて常に誰かが40時間の実地修練中に関わっている状態」であり、さらに「講義などの準備」、そして「40時間の範囲外での症例報告書の添削(患者個人が特定できない状態で、メールでやりとりもしました)」も行って頂きました。
2、3万円くらいかかってもとても割安だなと感じ、大満足の実地修練でした。
病院によっては麻疹、風疹などの抗体の確認が必要な場合があります。この場合は、検査費用が自己にて必要になるので注意しましょう。

試験について
試験対策は?
私は「受験必須セミナーでもらえるテキスト」と、別に販売されている過去問「NST専門療法士認定試験過去問題集Ⅰ」だけ勉強しました。
試験ではもちろん分からない問題もいくつかあったのですが、大体は解けるようになったかなと思います。
私は他に「静脈経腸栄養ガイドライン(インターネットでも閲覧可能)」と「日本静脈経腸栄養学会 静脈経腸栄養テキストブック」も持っていたのですが、試験勉強をするにあたってはよっぽど分からないことがあれば開くくらいで、なくても問題ないと思います。
勉強の方法としては受験必須セミナーのテキスト一通り読んでなんとなく理解した上で、過去問を解く→わからないところを調べる、をひたすら繰り返しました。とはいえ、私のように試験間際になって勉強時間が足りなくて焦っている方はひたすら過去問の特に太字の大事そうなところを押さえておけばよいかと思います。

試験問題は?
試験問題は回収されてしまうため、詳細をお伝えすることはできません。
4択くらい?の選択問題でした。
内容は基本的な知識を問われている問題が多かった印象です。様々な職種の方が受験しているため、薬剤師にとっては「いや、こんなの知らん」という問題でも他の方にとっては常識であったりすることもあるかと思います。
過去問題集を中心にしっかり押さえておけば、大体の問題は解けると思います。

試験の合格率は?
点数の合格ラインは不明です。試験合格率も正式には公表されてはいません。
一応、受験番号の一覧の発表はあるのですが、それを見た感じ8割以上は受かっているのかなという印象です。
試験を受けるまでに5年以上の経験や実地修練などいくつかハードルがあるので、試験に至るまでの日々の業務が勉強に結びついているのでしょうか。
また、試験では難しい問題もあるのですが、それ以上に簡単な問題が多いため、簡単な問題をいかに落とさないかが重要だと感じました。
最後に
今回はNST専門療法士の資格についてまとめてみました。
個人的に、栄養という分野は病院に勤めてから一番興味を持てた分野であり、NSTに関わることになってからは、この資格を目標にしていたので合格発表を見たときには嬉しかったです。
この資格には実地修練や受験必須セミナー、学術集会への参加が必要になり、それ自体がとても勉強になって面白いです。受験しようか迷っている方がいたら「合否に関係なく、医療人として確実にレベルアップできるよ」とお伝えしたいです。