非タンパクカロリー/窒素比とはアミノ酸が効率よくタンパク合成をすることができるための指標です。この指標は患者の状態、病態によって異なるためこれを理解することで適切なタンパク質(アミノ酸)の投与が可能になります。
これは栄養療法において、フレイル・サルコペニアを防ぐために重要です。
非常に簡単な、NPC/N比を使った計算の具体例も一緒に紹介していきます。
非タンパクカロリー/窒素比とは
NPC/N比:non-protein calorie/nitrogen とよく表記されます。
NPC/N比は投与されたアミノ酸以外の栄養素(糖質と脂質)から計算されるエネルギー量(non-protein calorie)を投与アミノ酸に含まれる窒素量(nitrogen)で割った比です。
アミノ酸は投与されたときに、一緒に十分なエネルギーがあればタンパク合成に使われますが、エネルギーが不足しているとエネルギー源として使われてしまいます。
つまりNPC/N比はアミノ酸を投与したときに、ちゃんとタンパク合成されるようにするためにはこのくらいエネルギーを投与してねという指標ということになります。
健常人だとNPC/N比は150~200くらいに設定されています。
NPC/N比の実際の利用
準備
一般的なタンパク質中には窒素は約16%含まれています。(タンパク質を構成するアミノ酸の構造式から算出)
この16%という数字を使うとタンパク質にどのくらいの窒素が含まれるのかが分かります。
タンパク質量×0.16=窒素量
この式を、窒素量からタンパク質量を算出するように変更すると、
窒素量/0.16=窒素量×100/16=窒素量×6.25=タンパク質量(アミノ酸量)
となります。この6.25を窒素係数と呼び、これは食品の窒素量からタンパク質量(アミノ酸量)を算出するための係数です。
窒素係数について、求め方は覚えなくてもよいですが、「窒素係数=6.25」という部分は下記の実践で使っていきます。
実践(その1:栄養投与前のNPC/N比の設定)
それでは、目標のNPC/N比を達成するためにどのくらいのタンパク質(アミノ酸)量を投与すればよいのかを調べてみましょう。
投与非タンパクエネルギー目標が1500kcal/日、目標NPC/N比が150としましょう。
この数字をNPC/N比に当てはめると、
1500/N=150 ⇒ N=10
⇒Nは窒素量なのでタンパク質量に換算すると、
N×6.25=10×6.25=62.5g
となり、1日に62.5gのタンパク質(アミノ酸)を投与し、糖質と脂質の合計投与エネルギーが1500kcalくらいにすればNPC/N比が150くらいになるということが分かります。
実践(その2:栄養投与中のNPC/N比の確認)
次は、現在投与している栄養がどのくらいのNPC/N比となっているのかを確認してみましょう。
点滴でブドウ糖を100g、アミノ酸を20g投与しているとします。
ブドウ糖(4kcal/g)の投与エネルギーは
100g×4=400kcal。
アミノ酸20g中の窒素はアミノ酸量から窒素係数を割ることで求めることが出来ます。
20g÷6.25=3.2。
よって、NPC/N比=400/3.2=125 となります。
今回は脂質(9kcal/g)は省略していますが、脂質もあればNPCとしてエネルギー分を追加します。
この「実践その2」によって、現在投与している栄養がどのくらいのNPC/N比なのかを調べることができます。これは点滴から栄養を投与している場合に、その点滴のメニューを考える際に使用することになるかと思います。
例えば、腎不全の人に輸液が必要な場合にはアミノ酸量が少なく、NPC/N比が大きい輸液を投与していきます。
病態ごとのNPC/N比の設定
最後に、このNPC/N比を個人個人に当てはめる場合にどのくらいを目標とすればよいのかという具体例を挙げていきます。健常人では150~200くらいが目標ですが、タンパク質(アミノ酸)をたくさん必要とする病態や逆に制限しなくてはいけない病態があります。
JSPEN(日本臨床栄養代謝学会)でも、タンパク質投与量については以下のように示しています。
体重当たり0.8~1.0kg/日を基準とし、病態及びストレスの程度に応じて増減する
⇒グレードAⅢ引用:日本臨床栄養代謝学会 静脈経腸栄養ガイドライン
この「病態及びストレスの程度」に当てはまる具体的なものが以下の通りとなります。
NPC/N比低い(タンパク質量多い)
炎症や侵襲によって体のタンパク質が使用されやすくなっている状態の人にはタンパク質を多く投与する必要があります。
- 80 ⇒ 重症熱傷、複合外傷など
- 100 ⇒ 敗血症、大手術
- 80~150⇒ 褥瘡
NPC/N比普通
NPC/N比は通常150~200くらいに設定します。
- 150 ⇒ 侵襲後安定期、脳梗塞など
NPC/N比高値(タンパク質量少ない)
- 200以上 ⇒ 腎不全
腎機能が悪く、特に腎不全(CKD)のステージまでいってしまうとタンパク制限をする必要があります。タンパク制限をすることで、タンパク質が代謝された後の代謝物である尿素窒素(BUN)を減らし、尿素窒素が蓄積することによる尿毒症を防ぐ目的があります。タンパク質に含まれるリン(P)の摂取抑制も期待できます。
ただし、タンパク質制限をすると今度は体タンパクの減少による、フレイル・サルコペニアといった懸念がでてきます。体のタンパク質がエネルギーとして使われないために、十分なエネルギーの投与が重要です。
栄養状態を把握するために、体重や上腕筋周囲面積測定による筋肉量なども一緒に確認することが重要です。

最後に
NPC/N比、窒素量の投与量がという話になっていますが、一番重要なことは投与エネルギーと投与窒素量のバランスという最初の部分です。今回の話は病態ごとに適したバランスでエネルギーとアミノ酸を投与することによって、タンパク質(アミノ酸)を本来の役割であるタンパク合成に向かわせるための方法の紹介です。
タンパク質(アミノ酸)を効率よく摂取し、フレイル・サルコペニアを防ぎましょう。
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