肝機能が低下した時の栄養状態・症状と対応について。アミノレバンEN、ヘパンED、リーバクトについても解説!

今回は肝臓障害に関わる栄養障害とその対策についてまとめていきます。

今回の記事の内容です!

  • 肝機能が低下すると、アンモニアの蓄積による肝性脳症につながる可能性がある。
  • 肝性脳症に注意しながら、タンパク質は十分に投与する。
  • 夜間、早朝の飢餓状態の予防として就寝前捕食療法(LES)を行う。
  • アミノレバンEN、へパンED、リーバクトはFischer比を高くするために投与する。
  • 必要に応じて微量栄養素の投与も検討する。

肝臓の機能について

肝臓の機能は大きく分けると「代謝」「解毒」「胆汁の生成・分泌」に分けることが出来ます。

肝臓の機能:代謝

消化管から吸収されたブドウ糖を「グリコーゲン」に合成して肝臓に貯蔵します。血糖値が下がってくると、グリコーゲンが分解されて、ブドウ糖として血糖値の維持を行います。
肝機能が落ちるとグリコーゲンを合成する能力が低下します。

また、糖質、タンパク質、脂質から脂肪酸を形成し、貯蔵・利用します。肥満や糖尿病、アルコール多飲による「脂肪肝」は肝臓に脂肪が蓄積しすぎた状態をいいます。

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肝臓の機能:解毒

肝臓は有害な物質、ホルモン、薬物などを分解します。

栄養障害に関わるという点で重要なのが、アミノ酸の代謝によって生じるアンモニア」の尿素への変換・解毒です。
肝機能が低下し、アンモニアが蓄積してくると高アンモニア血症を引き起こし、それが肝性脳症につながります。

肝臓の機能:胆汁の生成・分泌

赤血球が破壊された後に残るビリルビン」を使用して胆汁を生成します。
胆汁は脂肪の吸収を行います。

赤血球が破壊された後に出てくるビリルビンは「間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)」と言い、肝臓で「直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)」に変換されます。直接ビリルビンは胆のうの胆汁中に分泌され、一部は再び腸管から吸収され(腸肝循環)、一部はそのまま便として排泄されます。

肝臓の機能が低下することによって、「間接ビリルビンから直接ビリルビンへの変換ができない(間接ビリルビンの増加)」、「直接ビリルビンを胆のう中に分泌する機能が障害されている(直接ビリルビンの増加)※肝内胆汁うっ滞」、といったことが発生し、血中ビリルビンが異常に増えることがあります。

そして、黄色い物質であるビリルビンが皮膚や眼球の白目の部分に沈着し、「黄疸」という症状として現れます。

肝機能障害時の栄養学的特徴

肝機能障害によって肝機能が低下した際に発生する問題の中で、特に栄養に関わる部分を紹介します。

食欲不振

肝臓の代謝・解毒機能の低下によって「コレシストキニン」というホルモンが分解されにくくなります。

コレシストキニンは満腹感を伝えるホルモンです。このホルモンが分解されずに血中に維持されることによって満腹感が持続し、食欲が低下します。

また、肝臓にて合成されるアルブミンの量が低下すると腹水や腸管浮腫が発生し、それによる腹部膨満感から食欲低下につながります。

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吸収障害

胆汁の生成・分泌が低下することにより脂質や脂溶性ビタミンの吸収障害をきたします。

グリコーゲン貯蔵量減少

グリコーゲンとは、血中ブドウ糖がいくつも結合して合成されている物質で、肝臓や筋肉に貯蔵されています。空腹時にはグリコーゲンが分解されて、ブドウ糖を供給することで血糖値を維持させます。

肝硬変などで肝臓が萎縮することで、肝臓でのグリコーゲンの貯蔵量が低下します。
このため、グリコーゲンからのブドウ糖生成量が低下し、短期間の絶食で体は飢餓状態になってしまいます。

また、グリコーゲン貯蔵量減少を補うために、体タンパクや体脂肪が減少します。

飢餓状態での体タンパクの減少を防ぐために、「LES(late evening snack):夜間就寝前捕食」という方法があります。

肝性脳症

肝性脳症とは、肝機能障害によって多彩な意識障害を引き起こされてしまう状態をいい、主に「アンモニアの蓄積」が原因と言われています。

食事中のタンパク質を腸内細菌が分解した結果、アンモニアが生じます。
このアンモニアは体内に吸収され、通常は肝臓にて分解されます。

肝機能が低下し、アンモニアの解毒能力が落ちると、体内にアンモニアが蓄積します(高アンモニア血症)。
そして神経毒のあるアンモニアが脳に蓄積し、「肝性脳症」を発症します。

ただし、肝性脳症についてはまだ不明な点もあり、注意が必要です。
血中アンモニア濃度上昇は肝性脳症に関係しますが、高ければ高いほど起きやすいわけではなく、血中アンモニア濃度が高値でない場合に肝性脳症を発症する場合もあります。

肝性脳症の原因として、他にも「血中アミノ酸の代謝異常」や「睡眠薬のベンゾジアゼピン系薬剤の関与」など様々な可能性があります。

肝性脳症の症状としては、「日中の傾眠、異常行動、羽ばたき振戦」などがあり、症状が進行すると昏睡状態となります。

肝機能障害時の栄養療法

私のブログではおなじみのJSPEN(日本臨床栄養代謝学会)の「静脈経腸栄養ガイドライン」と、日本消化器学会の「肝硬変診療ガイドライン2015」をそれぞれ参考にまとめていきます。

※肝硬変診療ガイドラインについて、推奨の強さは「1:強い推奨、2:弱い推奨」、エビデンスレベルは「A:質の高いエビデンス、B:中程度の質のエビデンス、C:質の低いエビデンス、D:非常に質の低いエビデンス」となっております。

タンパク質投与量の決定

肝硬変患者に対しては、1.2g/kg/日を目安に十分量のタンパク質を投与する。⇒グレードAⅠ

劇症肝炎などに伴う肝性脳症の急性治療では、タンパク質制限を実施する。⇒グレードBⅠ

栄養障害を伴う肝性脳症患者に対して、漫然とタンパク質制限を行わない。⇒グレードAⅠ

引用:日本臨床栄養代謝学会 静脈経腸栄養ガイドライン


低タンパク食は顕性肝性脳症の治療に用いられることがあるが、タンパク質の分解を促進して肝硬変の予後を悪化させる可能性があり、長期管理としては行わないことを提案する。⇒推奨の強さ:2 エビデンスレベル:C

引用:日本消化器学会 肝硬変診療ガイドライン2015

タンパク質は栄養として非常に重要ですので、通常制限するべきではありません。
肝障害時にタンパク質制限をする意味は、肝性脳症を増悪させないためです。

急性期の肝障害ではタンパク制限によって肝性脳症の増悪を防ぐ可能性がありますが、タンパク制限を長期に続けることはサルコペニアなどにつながってしまう恐れがあります。

タンパク質の投与量は、健康成人で「0.8~1.0g/kg/日」です。
静脈経腸栄養ガイドラインでは、肝硬変患者に対しては「1.2g/kg/日」程度を目安に推奨しています。
肝性脳症になってしまわないか気になるところですが、肝障害のある方は炎症によって消耗が続いており、低栄養状態となっている方が多いです。

つまり、肝障害のある人のタンパク質の投与量については、
タンパク質制限は行わず、十分な量のタンパク質を投与する。肝性脳症の急性期にはタンパク質制限を行うこともあるが、長期的に続けるべきではない。
ということになります。

もし肝性脳症でタンパク制限が必要な場合、「低タンパク食(0.5~0.7g/kg/日)+肝不全用経腸栄養剤(アミノレバンEN・ヘパンEDなど)」を目安にタンパク質を投与します。

肝硬変用栄養剤の利用

肝硬変患者の栄養療法に使用するものとして、医薬品のものとしては「アミノレバンEN配合散」と「ヘパンED配合内用剤」、「リーバクト配合顆粒」があります。

それぞれの共通した特徴として、BCAAを多く含むことでFischer比が高く、アミノ酸インバランス(体内のアミノ酸のバランスが崩れている状態)を改善させる目的があります。

Fischer比とアミノレバンEN・ヘパンED・リーバクトについてそれぞれ解説していきます。

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点滴用の肝不全用の薬剤としてモリヘパミン、アミノレバン点滴静注用というものもあります。
また、アミノレバンEN、ヘパンEDと並んで「ヘパス」という商品も有名ですが、こちらは食品扱いのものになるので今回は割愛します。

Fischer比とは

Fischer比はBCAA(分子鎖アミノ酸)とAAA(芳香アミノ酸)の比であり、BCAA/AAAと表します。

BCAA(branched chain amino acids)

 

分子鎖アミノ酸である「バリン・ロイシン・イソロイシン」を指します。
タンパク合成促進作用と筋タンパク崩壊抑制効果があり、
多くのアミノ酸が肝臓で代謝されるのに対して、主に筋肉で代謝されます。

AAA(aromatic amino acids)

 

芳香族アミノ酸である「トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン」を指します。
主に肝臓で代謝されます。

筋肉で代謝されるアミノ酸であるBCAA」と「肝臓で代謝されるAAA」の量を比較しているのがFischer比です。

 

ではなぜ、このFischer比が重要になってくるのでしょうか。

肝機能低下時には、

AAAが使用されないことによるBCAAの利用増加

肝臓で代謝できなくなったアンモニアの筋肉での代謝

この2つの要因によってBCAAの消費が増大します。

肝機能が低下すると、AAAが肝臓で代謝されないことにより、その分BCAAが筋肉でたくさん代謝されます。また、タンパク質を摂取することで生じたアンモニアを肝臓で代謝できなくなり、代わりに筋肉で代謝しようとした際にBCAAが利用されます。

BCAAの摂取が足りなければ、筋タンパク質を消費してBCAAの供給が補われるため、筋タンパク質が減少し、サルコペニアへとつながります。
また、BCAAが足りずにアンモニアを代謝できなくなれば肝性脳症につながる可能性があります。

実際に、肝性脳症患者の血漿アミノ酸を見ると、Fischer比が低下している(BCAA↓、AAA↑)という報告もあります。

そのため、Fischer比が高い(BCAA↑、AAA↓)ものを摂取し、消費が増大しているBCAAを補給し、過剰なAAAの量を抑えます。(アミノ酸インバランスの改善)

アミノレバンEN・ヘパンED・リーバクトについて

この3つに共通しているのは「医薬品」、「肝硬変用経腸栄養剤」、「Fischer比が高い」という点です。アミノレバンEN・ヘパンED・リーバクトの違いを紹介していきます。

引用:大塚製薬 アミノレバンEN

引用:EAファーマ ヘパンED

引用:EAファーマ リーバクト配合顆粒

経腸栄養剤としての分類(アミノレバンEN・ヘパンED・リーバクト比較)

アミノレバンEN:半消化態栄養剤

ヘパンED:成分栄養剤

リーバクト:(分子鎖アミノ酸製剤)


どれも粉末の薬剤です。

アミノレバンは半消化態栄養剤で、窒素源がタンパク質であり、ラコールNFやエンシュアなどと同じ分類に入ります。

ヘパンは成分栄養剤であるので、窒素源がアミノ酸であり、その他の成分も消化管での消化が不要です。そのため、消化機能が低下した患者に適しています。

リーバクトは、BCAAの投与のみを目的としており、それ以外の栄養成分やエネルギーの摂取はできないため、半消化態栄養剤や成分栄養剤という分類には入りません。

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投与エネルギーとFischer比(アミノレバンEN・ヘパンED・リーバクト比較)

 アミノレバンENヘパンEDリーバクト配合顆粒
エネルギー濃度(kcal/g)42.638.83.9
容量(g/包)50804.15
(リーバクト配合経口ゼリーは20g/個)
1包あたりのエネルギー(kcal/包)21331016
BCAA(mg/包)610054674000
Fischer比(BCAA/AAA)4061BCAAのみ含有

アミノレバンENは1包あたり約200kcal、ヘパンEDは1包当たり約300kcalのエネルギーが投与可能です。そのため、食事が摂れていない場合にはアミノレバンENやヘパンEDでエネルギーが補給できます
また、就寝前捕食療法(LES)の際に、この200~300kcalはちょうどよいエネルギー量になります。

一方、リーバクトはBCAAの投与のみを目的としているので、1包あたりのエネルギー量は少ないです。そのため、食事が摂れている場合に、追加でBCAAを投与するという使い方になります。

効能・効果(アミノレバンEN・ヘパンED・リーバクト)

アミノレバンEN・ヘパンED:肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善

リーバクト:食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症の改善

これは「アミノレバンEN・ヘパンED」と「リーバクト」との大きな違いになります。
アミノレバンEN・ヘパンED」は肝性脳症があり、低アルブミン血症かつ食事摂取不良の人に適応となります。
リーバクト」は肝性脳症の有無に関係なく、低アルブミン血症かつ食事摂取良好な人に適応となります。
肝性脳症がなく、食事摂取不良な方には通常の経腸栄養剤などを使用します。
 

アミノレバンENとヘパンEDの違いまとめ

 アミノレバンENヘパンED
窒素源による分類半消化態栄養剤成分栄養剤
1包あたりのエネルギー
(kcal/包)
213310
亜鉛Zn(mg/g)0.0130.045
アルギニンArg(mg/g)6.0421.7
糖質(g/100kcal)14.819.9
脂質(g/100kcal)1.70.9
タンパク質(g/100kcal)6.43.7
用法1日3包1日2包
薬価(g/円)8.787.66
フレーバー、服薬補助剤フルーツ・コーヒー青りんご・オレンジ・パイナップル・コーヒー・ヨーグルト・グレープフルーツ・さっぱり梅・フルーツトマト・マンゴー・コンソメ・フルーツミックス・ムースベース・ゼリーミックス・水で作れるゼリーミックス

アミノレバンENとヘパンEDの違いは、あまりないかなと思います。

成分的には、アミノレバンENは半消化態栄養剤であるという点、タンパク質含有量が多いという点が特徴であり、ヘパンEDは成分栄養剤であるという点、亜鉛とアルギニンの含有量が多いという点が特徴的です。

ただ、私が今まで勤めた病院、調剤薬局はどこもヘパンは使用しておらず、アミノレバンENとヘパンEDはどちらか片方を採用してあればOKという感覚なのかなと思います。

就寝前捕食療法:Late evening snack

肝硬変患者は、グリコーゲンの貯蔵量が減り、短期間の絶食ですぐに体が飢餓状態となってしまいます。
そうなると、筋肉などのタンパク質を利用したり、脂肪を利用して栄養を補おうとしてどんどん低栄養状態になってしまいます。

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肝硬変患者はたった約半日の絶食で、健常者の3日間の絶食時に近い状態になってしまうとされています。
そのため、晩御飯を食べてから次の朝食までの時間で、体は飢餓状態になってしまう可能性があります。
この飢餓状態を避けるために考えられたのが「就寝前捕食療法:Late evening snack(LES)」です。
これは、寝る前に栄養補給をすることで、絶食中となってしまう就寝中の飢餓状態を防ぐことを目的としています。
LESについては、日本臨床栄養代謝学会と日本消化器学会それぞれが推奨しています。
グリコーゲン貯蔵量の減少による夜間の飢餓状態を避ける食事摂取方法として、夜間就寝前捕食(late evening snack:LES)は有用である。⇒グレードAⅠ
一般的な食事や捕食以外に就寝前のBCAA顆粒製剤や肝不全用経腸栄養剤の摂取によって栄養状態の改善が得られる。⇒グレードAⅠ
引用:日本臨床栄養代謝学会 静脈経腸栄養ガイドライン

就寝前エネルギー投与(LES)による肝硬変の予後については明らかではないが、エネルギー代謝やQOLを改善するので行うよう提案する。
⇒推奨の強さ:2 エビデンスレベル:C
引用:日本消化器学会 肝硬変診療ガイドライン2015
上記の通り、就寝前捕食療法(LES)によって低栄養状態への進行を防ぐことができる可能性があるため、肝硬変患者に対しての栄養療法としては重要な方法となります。
では、寝る前にどのくらいのエネルギーを投与すればよいかというと、それは大体200kcalと言われています。
200kcalは、「おにぎり一個分」もしくは「アミノレバンEN・ヘパンED1包分」です。
そのため、肝性脳症が見られる患者さんに対しては、BCAAも豊富なアミノレバンENを就寝前に投与するという方法がとられることも多いです。
就寝前捕食療法(LES)について注意が必要なのは、寝る前にとる食事はあくまでも分割食という扱いであるため、LESをしてもしなくても、1日の総摂取エネルギーは変化しません。
つまり、1日の目標摂取エネルギーが1200kcalである場合、LESにて就寝前に200kcal摂取すれば、朝・昼・夕食で合計1000kcalを摂取することになります。
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NSTのラウンドでもアミノレバンENによるLESは提案していました。試してくれなかったことも、そこそこありますが。

微量栄養素の投与

慢性肝疾患患者では、ビタミンB₁及び亜鉛などの微量元素のアセスメントを行う。⇒グレードBⅡ

胆管閉塞を伴う慢性肝疾患(原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎など)では、胆汁分泌の減少から脂溶性ビタミンの吸収障害をきたす可能性がある。

引用:日本臨床栄養代謝学会 静脈経腸栄養ガイドライン


亜鉛欠乏を合併する肝性脳症には、亜鉛製剤の補充を考慮してもよいと考える。⇒推奨の強さ:なし、エビデンスレベル:B

カルニチン欠乏を伴う肝性脳症に対しては、カルニチンの投与を行うことを考慮する。⇒推奨の強さ:なし、エビデンスレベル:B

引用:日本消化器学会 肝硬変ガイドライン2015

肝障害のある患者さんでは、微量元素の欠乏にも注意が必要です。

亜鉛補充によって血中のアンモニア濃度が低下するという報告もありますが、症例数が少なく、肝硬変ガイドラインではまだ強く推奨するまではいっていないようです。
ただ、コストが大きくない、大きな副作用が報告されていないなどという点から、亜鉛補充に関して大きな問題はないとしています。

カルニチンは長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運搬することで、ミトコンドリアでエネルギーを産生させます。
ミトコンドリアの働きの一つに「アンモニアの代謝」があるのですが、カルニチンが欠乏することでミトコンドリアの機能が低下し、肝性脳症の増悪につながる可能性があります。
そのためカルニチン欠乏となっている場合、カルニチンを補充することでミトコンドリアによるアンモニアの代謝が再開し、肝性脳症を改善させる可能性があります。

肝機能障害と薬剤師

薬剤師にとって肝機能といえば、投与量が正しいかどうか、副作用が出ていないかどうかなどの判断材料であることが多いです。

しかし「肝臓」についてちゃんと振り返ってみると、人が生きていくのにとても重要な「栄養」と密接に関わっていることが分かります。

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病院に勤める前、調剤薬局でもアミノレバンENは出していたのですが、その特徴に詳しくないことはもちろんのこと、LESについて全く知りませんでした。それだけ「肝臓」と「栄養」が結びついていなかったと思います。
肝機能障害・食事という観点から患者さんを見てみると、日常生活の苦労などが垣間見えてきます。それによって薬剤師として必要な介入が分かることもあるかと思います。
栄養について学んでいる今は、医療従事者として、薬剤師ももっと栄養について学ぶべきと感じています。

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