食物繊維と聞くと栄養という分野ではあまり重要ではないというイメージがあるかもしれませんが、その機能は非常に重要ですのでまとめていきます。
食物繊維とは
ヒトの消化酵素で消化されず、小腸から吸収されないまま大腸に達するものをいい、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けることが出来ます。
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、1日の摂取目安量は成人男性で20g、女性で18g以上とされています。
食物繊維の種類と例は以下の通りです。
〇水溶性食物繊維
ペクチン(果物、野菜、マネ、ナッツ類)、グアーガム(豆類)、β‐グルカン(穀類)、アルギン酸(海藻類)、グルコマンナン(こんにゃく)
〇不溶性食物繊維
セルロース(穀類、野菜、果物類)、ヘミセルロース(野菜、果物、豆、ナッツ類)、リグニン(ココア、セロリ)、キチン・キトサン(甲殻類の殻)
それでは水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の特徴をまとめてみます。
食物繊維の特徴
水溶性食物繊維
〇粘性:水分を吸着することで粘性が増大し、食事中の糖質・脂質を取り込んでその吸収を抑制します。これは特に糖尿病や脂質異常症、心血管系の患者さんにとって重要です。
〇発酵:大腸で腸内細菌による発酵を受け、短鎖脂肪酸や炭酸ガス、水素ガス、メタンガスを生成します。この短鎖脂肪酸は大腸粘膜細胞の栄養となり、さらに腸管腔内を酸性に傾けてクロストリジウムや大腸菌の増殖を抑制します。
不溶性食物繊維
〇保水性:水分を吸収することで容積が増大し、胃内容物の増加により満腹感が得られ、食事摂取量が抑制されます。また糞便量を増加させ、下痢の場合は適度な硬さになり、便秘の場合は大腸通過時間が短くなることで症状を改善させます。
〇発癌抑制:大腸内で産生された発癌物質の大腸粘膜への接触時間を短縮させます。
注意)腸管蠕動が低下した患者さんに使用すると腸閉塞を発症したという報告もあります。
食物繊維とコンニャクゼリー
こんにゃくにはグルコマンナンという水溶性食物繊維が含まれていますが、よく売られているこんにゃくには凝固剤が使われており不溶性食物繊維になってしまっています。コンニャクゼリーには凝固剤が使われていないため、そのまま水溶性食物繊維として機能しています。
食物繊維と薬剤師
基本的に関わることはありません。医療用医薬品として「食物繊維」を補給する目的の薬は存在しないです。
ただ、食物繊維が入っている薬剤は存在します。それがエネーボ、ラコール半固形です。
エネーボはその特徴の一つとして食物繊維が含まれています。
ラコール半固形は半固形に固める成分が食物繊維です。
NSTとして介入する中で、ラコールなどで下痢を起こしてしまう人に対して、エネーボにすると食物繊維入っているよと提案することはあります。(下痢を起こす要因・対処は様々あります。)