がん(悪性腫瘍)と栄養

がんはその進行度、発症部位、治療などによって栄養状態が様々な影響を受けます。

がん自体がとても奥の深い部分ではあるのでどれくらい紹介できるか分かりませんがまとめてみたいと思います。

がん とは

がんは遺伝子に異常をきたして発生した病的細胞の集団であり、がん細胞は正常細胞とは異なる異常増殖を繰り返していきます。それによって正常細胞に対して圧迫したりして各臓器に影響を与えていきます。

どこかの部位(臓器)で増殖したがんは血液中に出てしまうとそれが血流にのって他の臓器に広がって増殖してしまいます。(転移)

また、がんの存在によって様々なサイトカインの分泌が促されます。それはがん細胞自身からのものの他にマクロファージなどの免疫細胞からのものがあります。

がんによる栄養障害はがん自体による影響サイトカインによる影響の二つに大きく分けることが出来ます。

がんによる栄養障害

まずは、がん自体による影響をまとめていきます。

がんの発症部位によって現れる栄養障害はことなってきます。

がんの発症部位と栄養障害
  • 消化管(食道、胃、大腸)がん:消化管の狭窄→通過障害→嘔吐、食思不振、便秘など
  • 消化管がん:腫瘍組織の脱落→出血→貧血、低アルブミン
  • 膵臓がん:膵液の流出障害→インスリン分泌低下→糖尿病
  • 胆管がん:胆汁の流出障害→脂肪の消化・吸収障害→脂肪便
  • 肺がん:呼吸困難→食事量減少
  • 肺がん:食道圧迫→嚥下困難

このようにがんは発症する部位によって生じる栄養障害は異なってきます。もちろんこれ以外の症状もたくさん出てきますが。

機序としては、がんが増えていく中で、がん周囲の組織が圧迫されたり浸潤されることによります。

また、もう一つ栄養障害に重大な影響を持つ要素として「サイトカイン」という細胞間の情報伝達を担う物質が関わってきます。

サイトカインによる栄養障害
がん自身からサイトカインが分泌されるだけでなく、がんに対する免疫応答としてマクロファージなどの免疫応答細胞が炎症性サイトカインを分泌します。
それによってたんぱく質、脂肪の分解の進行、食思不振などが起こります。
がんが小さいときにはあまり大きな影響はないのですが、大きくなってくるとサイトカインの分泌量が増え、炎症反応の亢進などが引き起こされます。これによって体重減少が著しくなると「がん悪液質」と呼ばれる状態になります。

がん悪液質とは

悪液質(カヘキシア)という基礎疾患を背景とした筋肉量の減少を特徴とする複合的代謝異常の症候群があり、そのがんバージョンです。

今のところ具体的な定義というものはまだありませんが、「栄養療法で改善することが困難であり、進行性の栄養障害の症候群」といった感じです。

がん悪液質という状態になるともとの状態に戻るのは非常に難しいので前悪液質(プレカヘキシア)で食い止めることが重要となります。

がん患者への栄養

がん患者には体重減少や栄養障害が大なり小なり存在します。がんに対して栄養を加えると余計にがんの増殖を加速させるというイメージをもつこともあるかもしれませんが、体重減少など栄養不良があるほうが生存率が低いようです。

がん患者ではサイトカインによるたんぱく質や脂肪の分解が亢進しており、栄養はしっかりと補給する必要があります。

日本静脈経腸栄養学会ガイドラインでは、

がん治療を開始する際には必ず栄養状態を評価し、低栄養状態に陥っている/陥るリスクが高い、と判断した場合には積極的に栄養療法を実施する。

をグレードAとしています。

最新情報をチェックしよう!