抗がん剤(抗悪性腫瘍薬)と栄養

がんに対しての治療として手術、抗がん剤による治療、放射線治療というものがありますが、今回は抗がん剤による栄養状態への影響についてまとめていきます。

抗がん剤(抗腫瘍薬)とは

抗がん剤とは、その名前そのままにがんに対しての治療を目的とした薬の総称です。総称ですので単に抗がん剤といっても飲み薬と注射薬があり、薬の作用的には化学療法薬(殺細胞性)や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法薬などがありそれぞれに特徴は異なります。※抗がん剤による治療をまとめて化学療法という場合もあります。

またその使い方も手術の前に使用する方法や逆に手術の後に使用する方法などもあります。

問題となる副作用の現れ方も使用する薬によって異なりはするのですが、今回は代表的な栄養障害を引き起こす副作用についてまとめます。

抗がん剤と栄養障害

栄養障害という部分に限れば、抗がん剤の副作用として問題になるのは主に消化管に現れるものになります。

その消化管に現れる副作用は以下の通りです。

  • 悪心、嘔吐
  • 口内炎
  • 下痢

それぞれについて解説していきます。

悪心、嘔吐

気持ちが悪くなり、その結果食べたものを戻してしまったり、食思不振によって食事量が減ってしまう可能性があります。それはそのまま栄養障害に直結してしまいます。

臭いが強いものだと余計に気持ち悪くなる可能性があるので注意が必要です。冷やして食べることで有効なこともあります。基本的には食事がとりずらい時には食べやすいものを食べられるだけとりましょうという形になります。

悪心、嘔吐は薬の投与後3日以内くらいに現れることが多いです。個人差はありますが、薬の投与後1週間程度で症状がおさまってくることがあるので、そこからまた普段の食事、食べたい食品をとってもらうのもいいかと思います。症状が強い場合は吐き気止めの使用や、次回以降の抗がん剤の投与量を調節することも検討されます。

しばらく食事が摂れないとどんどん衰弱してしまいます。それは筋肉量の減少につながりサルコペニアとなって状態はさらに悪くなってしまいます。そのような場合には病院で点滴によって栄養を補給してもらう必要があります。入院が必要になることもあります。

口内炎

抗がん剤の副作用は細胞分裂が盛んな箇所に起こってきます。(骨髄抑制や脱毛など)

口腔粘膜細胞もその一つで、抗がん剤によって生じるフリーラジカルによる細胞障害や免疫能低下による感染、口腔乾燥などによって口内炎を生じてしまいます。

これは抗がん剤投与後2週間くらいしてから症状がでてくることが多いです。

健常人であれば「口内炎出来ていたいなー」という程度なのですが、抗がん剤によって治療中の患者に起こるとその症状は重くなる可能性があり、疼痛、出血、味覚障害といった生活レベルを著しく低下させる危険があります。

そのため、毛先の柔らかい歯ブラシを使用する、うがいなどで口を潤す、歯科受診して歯石の除去などで清潔を保つといった口腔ケアが非常に重要になってきます。

下痢

腸管粘膜細胞もまた細胞分裂を盛んに行っているため抗がん剤による影響が出やすいです。

腸管粘膜細胞が障害されることによって腸管での吸収が低下し浸透圧性の下痢を生じます。(吸収されないことで濃くなった腸管内容物を薄めようと水が出てきて下痢となります。)

下痢によって困るのは日常生活と脱水です。下痢を起こしている場合には食事の1回の量を減らして食事回数を増やすという方法が有効です。また、脱水に気を付けなければいけないので水分をこまめにとる必要があります。ただ、下痢によって失うのは水分だけではなく、電解質(ナトリウム、クロールなど)も一緒に失っています。そのため下痢がひどい場合には経口補水液が有効です。

まとめ

抗がん剤によって栄養状態が悪くなる可能性があります。がんの治療のためには抗がん剤が限られた手段の一つである以上、これは仕方のないことです。

しかし放っておいてはいけません。

栄養状態が悪くなればそれだけがんの治療という面でマイナスになってしまうためいかに栄養状態を維持するかということが重要になってきます。そのためには食事を続け、栄養を補給し続けて衰弱、サルコペニアを防ぐということが大切です。管理栄養士による食事指導が大きな助けになることもありますし、副作用については薬剤によって上手に付き合っていくことが出来る部分もあります。がん治療を成功させるためにもどのように栄養障害を防ぐのか、多職種で検討していく必要があります。

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