呼吸商という言葉はあまり臨床の場で話すことは少ないかもしれませんが、3大栄養素の特徴を知る上で重要な考えになるため、まとめてみたいと思います。
呼吸商とは
呼吸商(respiratory quotient:RQ)とは単位時間に生ずる二酸化炭素量と消費された酸素量の比のことです。
式で表すと以下のようになります。
呼吸商=二酸化炭素(CO₂)産生量/酸素(O₂)消費量
この呼吸商は栄養素ごとに異なります。つまり、栄養素ごとに分解してエネルギーに変換する際に、使用する酸素量と産生する二酸化炭素量が異なります。
3大栄養素について、その呼吸商が分かっており、それは以下の通りです。
- 炭水化物:1.0
- タンパク質:0.8
- 脂質:0.7
この栄養素ごとの呼吸商の違いが一体どのような意味を持つのでしょうか。
「呼吸商が低い」という場合、それは栄養素からエネルギーを生み出した際に生じる、「二酸化炭素量が少ない」ということを意味します。
⇒ブドウ糖の呼吸商=6CO₂/6O₂=1.0
COPDと脂肪
COPD患者では、その換気能力の低さから、なるべく二酸化炭素の排出が少ないほうが体への負荷が少ないです。
そこで考えられる有効な手段が「脂肪」の投与です。
脂肪は3大栄養素の中では、「呼吸商が0.7」と最も低いです。
さらに、生成するエネルギーも他の栄養素よりも多いです。
※生成するエネルギー(1gあたり)⇒糖質:4kcal タンパク質:4kcal 脂質:9kcal
つまり脂肪はより少ない量でたくさんのエネルギーを補給することができて、さらに排出する二酸化炭素も少ないという特徴を持ちます。
この特徴は、ガス困難が困難で、必要エネルギー量が増えているCOPD患者に対して有利に働いてきます。
ただ、実際には高脂質含有経腸栄養剤による有効性は証明されておらず、プラスの面とマイナスの面の報告が色々とある、という段階のようです。
そのため、静脈経腸栄養ガイドラインでは以下のように示しています。
著しい高炭酸ガス血漿があれば、高脂質含有経腸栄養剤が有用となる可能性がある⇒グレードBⅡ
安定期COPD患者では、標準的な経腸栄養剤を用いてもよい⇒グレードAⅡ
引用:日本臨床栄養代謝学会 静脈経腸栄養ガイドライン
