言語聴覚士とは
言語聴覚士とはST(Speech-Language-Hearing-Therapist)とも言われ、話す・聞く・食べるといった部分の障害に対応するプロフェッショナルです。PT(理学療法士)、OT(作業療法士)と並んでリハビリ科として病院ではまとめられがちです。
言語聴覚士の仕事
言語聴覚士(以下ST)さんの仕事としては簡単にまとめると以下のような分野の機能改善、検査の助言、援助を行っています。
- 言語障害
- 聴覚障害
- 嚥下障害
STさんの働く職場(医療機関)によって聴覚障害の方を多く扱うなどの違いがあるようですが、私がみてきたのは主に嚥下障害にあたる部分です。他の部分のことを書くと過不足が多く出てきそうなので書きません。(NSTラウンドの際に補聴器のハウリングをさっと直す姿がかっこよかったりしますが。)
言語聴覚士と嚥下障害
あくまで「薬剤師から見た」STさんのお仕事とみてもらえるとありがたいです。
- 嚥下評価
- 検査
- 嚥下機能改善訓練
嚥下評価
病院においてとても重要な仕事です。
患者さんが入院された際、その患者さんは入院契機となった病気や衰弱によって入院前と同じ食形態で食べることができるとは限りません。たとえ入院前は普通の食事をとっていたとしても入院後は上手に飲み込むことができなくなってしまう場合があります。もし適した食形態を提供できなければ、食事や水が上手に飲み込めずに肺に落ちてしまい誤嚥性肺炎につながり(食形態に限らず起こる可能性はありますが)、最悪の場合食事によって窒息してしまう可能性があります。
STさんは患者さんそれぞれにどのような食形態が適しているのか(とろみがついていないといけない、細かく刻まれていないといけない、水を飲むと誤嚥しやすいなど)を評価します。また同時に適した食事方法(ギャッジアップが必要、食事の介助が必要など)も提案してくれます。この評価をもとに患者さんの食形態が決定され、食事が提供されます。
検査
VF(嚥下造影検査),VE(嚥下内視鏡検査)を医師と共に行いその検査の評価、サポートを行います。これも先に挙げた嚥下評価ではあるのですが別にくくってみました。VFやVEを行ったほうがより正確にその人の嚥下機能を確認することができます。
嚥下機能改善訓練
これも入院後の社会復帰に向けて重要な仕事です。誤嚥性肺炎で入院⇒改善して退院⇒再び誤嚥性肺炎にて入院という繰り返しが度々起こってしまいます。これを繰り返すたびに徐々に衰弱し、嚥下機能も落ちて行ってしまうという負のループが起こってしまうのですが、嚥下機能を改善する訓練を行うことで退院後も誤嚥を起こしにくくなります。
言語聴覚士と薬剤師
それぞれの通常業務ではお互いにあまり関わることはありません。私は恥ずかしながらSTさんの仕事ぶりをNSTとして一緒に関わることになってようやく知ることができました。
NSTやカンファレンスの場がなければ、STさんと薬剤師は仕事で交流することは少ないかなと思います。
NSTと言語聴覚士
ではSTさんがNSTの中でどのような役割をしていたかというと、主には食形態の提案です。
その患者さんの状態から誤嚥が怖いのでこのような食形態の方がいいとか、状態がよくなってきたので食形態を上げましょうかという提案をよくしてくださっていました。特にSTさんの担当の患者さんが対象だと、嚥下機能などとてもよく把握しているのでラウンドの際の重要な情報となりました。
病院でのNST関連の加算として栄養サポートチーム加算というものがあるのですが、いくつかある条件の中に必要な職種で構成されるというものがあります。この職種とは医師、看護師、栄養士、薬剤師の4職種であり(2020年5月時点で)、STさんを含めリハビリ関係の職種は入っていません。
NSTとして一緒に仕事をしているとSTさんは必要不可欠な存在であると感じています。ですので栄養サポートチーム加算にSTさんも要件に含まれるといいなと思います。(その分加算の条件は難しくなりますが)
薬剤師から見た言語聴覚士
恥ずかしながらNSTとしての活動をしなければ私はちゃんとSTさんを把握できていなかったのですが、NSTをやってよかったと思えることの一つにSTさんのことを知ることができたことがあります。
健康寿命を延ばす、QOLを上げる、医療費を抑制する。これからの時代に必要な役割をSTさんの仕事が大いに担っていると感じます。
私がみているSTさんの仕事は偏っているかと思いますが、これからもっとSTさんの仕事が評価され広まってくると確信しています。