苓甘姜味辛夏仁湯、りょうかんきょうみしんげにんとう と読みます。
これはどんな漢方薬かというと、花粉症に使う漢方薬です。
苓甘姜味辛夏仁湯の特徴としては「麻黄による副作用で小青竜湯が使えない人にも使いやすい」という点が挙げられます。
花粉症と漢方
花粉症に用いる西洋薬の問題点
西洋薬の一番の問題点は眠気が生じる可能性があることです。
花粉症の症状を抑えるために、飲み薬ではアレグラなどの西洋薬を使うことが多いかと思います。アレグラぐらいであれば眠気についてあまり問題にはなりませんが、反対に花粉症の症状を抑える力は弱いです。
もう少し症状を抑える力のあるものだと、今度は問題の眠気が出てしまう可能性があります。眠気に関しては結構面倒で、薬を飲んでいる間は運転をしてはいけないものまであります。また実際に眠気として感じなくても、集中力が下がり、仕事のパフォーマンスが下がる可能性があります。
私自身、眠気よりも集中力の低下が嫌で、あまり西洋薬は飲みません。
花粉症と漢方薬のメリット・デメリット
花粉症に使う薬として、漢方薬には西洋薬にはないメリットがあります。
- 眠気の心配がない
- 構成生薬によっては冷え・肩こりなど他の症状に対しても有効
反対にデメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
- 複数の生薬を含むため、体に合わない生薬が入っている可能性がある
- 風味が飲みづらい可能性がある

花粉症に使う漢方薬
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
構成生薬:麻黄、桂枝、五味子、半夏、乾姜、細辛、芍薬、甘草
花粉症といえばこれです。主に鼻水・くしゃみがつらい場合には小青竜湯が適しています。
私自身も花粉症がつらいときにはこれを飲んでいます。
しかし、構成生薬に「麻黄」を含んでいるため、人によっては動悸や胃腸障害、不眠といった副作用が現れることがあります。小青竜湯をのんでこれらの副作用が現れてしまう場合、別の薬を考えた方がよいでしょう。
また、葛根湯加川芎辛夷と麻黄附子細辛湯も麻黄が入っているため要注意です。
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
構成生薬:桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草、麻黄、葛根、川芎、辛夷
これも花粉症によく使われる漢方薬ですが、小青竜湯との違いとしては、鼻づまりの症状がひどい人に適しています。
これはその名の通り葛根湯に生薬の川芎と辛夷が加わったものです。花粉症の症状である鼻づまりだけでなく、頭痛や肩こりを改善する効果も期待できます。
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
構成生薬:麻黄、細辛、附子
この漢方薬は特に体を温める作用が強く、手足の冷えがある場合に適しています。
苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)
構成生薬:茯苓、甘草、乾姜、五味子、細辛、半夏、杏仁
今回のメインテーマの漢方薬です。
ではこの苓甘姜味辛夏仁湯がどのような人に適しているかというと、鼻水、くしゃみがつらい人に適しています。
鼻水がつらい人にはもう小青竜湯という漢方薬があるのですが、これらの漢方薬には違いがあります。
苓甘姜味辛夏仁湯と小青竜湯の違い:麻黄
それは構成生薬の中の麻黄を含むか含まないかです。
麻黄の働きについて紹介します。
麻黄の基本薬能は「水の排除」です。守備範囲が表であるため基本的には体表に水があまり、浮腫、喘鳴や疼痛が現れた時に用いられます。また、意図的に発汗を促す目的でも用いられます。
麻黄は、目的によって組み合わされる生薬が異なることが一つの特徴として挙げられます。
・麻黄+桂枝⇒発汗させることで体表の水を排出
・麻黄+石膏⇒表の水を裏に引き込み、結果として尿として排出
引用:Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬
花粉症の場合、体内の水分が偏ることによって鼻水という症状がでていると考えられます。そのため麻黄によって水を排出し、鼻水がでないようにしてくれます。
麻黄の副作用として、胃腸障害や動悸、不眠などが現れる可能性があります。
また、麻黄が入っている漢方薬は妊婦さんや、ドーピング検査されるような大会に出るスポーツ選手には使えないことにも注意が必要です。
しかし苓甘姜味辛夏仁湯は麻黄を含まないため、麻黄による副作用を気にせず使うことが可能です。※漢方薬は多成分の薬であるため、ドーピングを気にする方は慎重に判断していただく必要があります。
まとめ
花粉症に使う漢方薬としては、一般的には小青竜湯が一番有名かと思います。
しかしよく使われるだけに逆に、副作用に悩む人もまた少なからずいる可能性があります。
「小青竜湯が使いづらい方には苓甘姜味辛夏仁湯という漢方薬があるよ!」ということをお伝えしたかったです。
花粉症で困っている方は一度医師、薬剤師などに相談してみてください。