とってもシンプル。補中益気湯と十全大補湯の違いを解説します!

体がだるい、食欲がない、病弱な体質が気になる、そういった時によく使われる漢方薬として、補中益気湯十全大補湯があります。

どちらも補気剤として、同じような目的で使われるのですが、どのように使い分ければよいのか、その違いは何なのでしょうか。

2剤の違い・使い分けとして、簡単にまとめると以下のようになります。

血虚(皮膚の乾燥や脱毛)があれば十全大補湯。
胃が弱く、血虚がなければ補中益気湯。

それぞれの違いについて、もう少し掘り下げてみます。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

構成生薬

人参、蒼朮、生姜、大棗、甘草、陳皮、黄耆、当帰、柴胡、升麻
補中益気湯の構成生薬として特徴的なのが、四君子湯という漢方をベースにしている点です。
四君子湯はもともと人参、茯苓、蒼朮(白朮)、甘草の4つの生薬から構成されており、現在は大棗と生姜を加えたものを四君子湯と呼ぶことが多いです。
この四君子湯は「補気剤」として様々な漢方処方のベースになってくる重要な処方です。
補中益気湯には茯苓が含まれていませんが、四君子湯をベースに作られています。

効能・効果

消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症: 
夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、
脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症

引用:ツムラ補中益気湯 添付文書

特徴

補中益気湯はその名称の通り、中(おなか)を補うことで気を満たす処方です。
四君子湯をベースに消化吸収を助け、体に気を巡らせることで倦怠感、食欲不振の改善を目指します。

医王湯とも呼ばれ、どのような方にも安心して使いやすいです。

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

構成生薬

人参、茯苓、蒼朮、甘草、当帰、川芎、芍薬、地黄、桂枝、黄耆
名前の通り、生薬が10種類入っているのが十全大補湯です。
十全大補湯は構成生薬として、四君子湯四物湯をベースとしているのが特徴的です。
四君子湯は補中益気湯の所に書いた通り、「補気剤」として重要な処方です。
四物湯は当帰、川芎、芍薬、地黄という4つの生薬から構成されており、「補血剤」として多くの漢方のベースになっている処方です。

効能・効果

病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血

引用:ツムラ十全大補湯 添付文書

特徴

構成生薬から分かる通り、「補気剤」と「補血剤」を組み合わせた処方です。

補気剤として、倦怠感、食欲不振を目的とするだけでなく、補血剤として、皮膚の乾燥、脱毛、貧血といった症状も目的としています。

補中益気湯と十全大補湯の違い

使用目的

補中益気湯:「補気

十全大補湯:「補気」+「補血

十全大補湯には補血作用があるので、気虚だけでなく、皮膚乾燥や脱毛、貧血といった血虚の症状に対しても対応可能です。特に「皮膚の乾燥」という点は、補中益気湯と十全大補湯の使い分けの際に、簡単で役に立ちます。

また、十全大補湯の方が、補血も必要とする状態であるということを考えると、より状態が悪い人に使用するとも考えることが出来ます。

注意点

地黄による胃もたれ

十全大補湯には生薬の「地黄」が含まれています。この地黄は、血虚に対応するために重要な生薬ですが、副作用として胃腸障害が有名です。

胃が弱い方には慎重に使用を検討する必要があります。

甘草による偽性アルドステロン症

甘草の投与量が多いと、高血圧、低カリウム血症、浮腫などを引き起こす「偽性アルドステロン症」となる可能性があります。
これは補中益気湯・十全大補湯のどちらも共通した注意点です。

偽性アルドステロン症は甘草の量が多いほど発症する可能性が高くなります。補中益気湯(甘草:1.5g/包)、十全大補湯(甘草:1.5g/包)ともに、甘草の量は特別多くはありませんが、今回の2剤は基本的に長期的に服用する必要がある漢方処方であるため、偽性アルドステロン症の発症の有無は継続して確認していく必要があります。

まとめ

補中益気湯と十全大補湯の使い分けについて、今までのことを簡単にまとめると以下のようになります。

血虚があれば、十全大補湯。
血虚がなく、地黄による胃腸障害を回避するのであれば、補中益気湯。
ただ、どちらも補気剤として優れているため、倦怠感や食欲不振がみられる場合はどちらを使用してもかまいません。
まずは使用してみてから、味なども含めて合わなければ変更していけばよいと思います。
no-su
私は煎じ薬を扱う調剤薬局に勤めていた時、地黄による胃腸障害に興味があり、煎じ薬の十全大補湯を毎日飲んでいましたが、胃もたれなどは感じることはできませんでした。

最新情報をチェックしよう!